毎年、雪が降り始める前に新潟県の母の家で手伝っている“雪囲い”。豪雪地ではおなじみの冬支度なのですが、今年はちょっと…いや、ほとんど別物と言っていいほど様子が違いました。
その理由は、連日のようにニュースで取り上げられている「熊の出没」。
地域放送では「熊が出没しています。十分ご注意ください」というアナウンスが流れ、新聞にも注意喚起の折り込みが入るほどの緊迫感。
そして何より衝撃だったのが、つい先日ご近所の方が見つけた“家のすぐ裏の柿の木に残る生々しい爪痕”です。
山が近いとはいえ、ここは国道にも面した、静かとは言えない場所。これまで一度も熊の注意喚起など出たことがありませんでした。
「まさか、こんなすぐ近くまで…」。そんな思いが頭をよぎり、私たちはいつになく背後の山を気にしながら、緊張感の中で雪囲いを進めることになりました。
いつもの“冬前のルーティン”が、今年は初めて感じる緊張感に包まれる作業に。
ということで今回は、熊を警戒しつつ行った雪囲い作業の様子を、少しの緊張とリアルな体験を交えながら紹介していきます。

この記事は、こんな人におすすめです👍
- 豪雪地や里山に暮らす人・関連がある人
- 熊出没に関心がある人・不安を感じる人
- 田舎暮らしに興味がある人・移住を検討している人
- 自然・山・アウトドア系に興味がある人
- ブログや体験記が好きな人
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❄️ 豪雪地の冬支度「雪囲い」とは?

熊の話題に入る前に、まずは私たちが毎年、冬の訪れの前に行っている「雪囲い」について、少しだけ紹介させてください。
雪の降らない地域の方にとっては、聞き慣れない言葉かもしれません。
「窓に板を貼るなんて、ちょっと大袈裟じゃない?」
と思われるかもしれませんが、豪雪地帯では雪おろしと同じくらい大切な、家を守るための“冬の命綱”のような作業なのです。
ちなみに、母の家は豪雪地の中でも、特に厳しい「特別豪雪地帯」に指定されている地域にあります。 そのため、この雪囲い作業は欠かすことができません。
雪囲いが必要な理由:雪や風のダメージから家を守る
私たちが毎年行う雪囲いの目的は、簡単にいうと窓や建物を「雪害」という直接的なダメージから守ること。
特に豪雪地帯では、家屋を脅かす複合的な被害が起こりやすいため、雪囲いはまさに昔ながらの「防御壁」として機能します。
- 強力な圧力: 屋根からの落雪や、積み重なった雪の重みが窓を押し破る「沈降圧」。
- 物理的な衝撃: 屋根から落ちてくる氷や雪の塊の直撃による窓ガラスの破損。
- 吹雪と凍害: 隙間から入り込む雪の吹き込みや、それによる窓枠の凍結・木材の湿気による損傷。
こうした被害から家を安全に守るための知恵なんだと、毎年作業しながらその重要性を改めて実感します。
我が家の方法:「木材はめ込み式」

今回行った雪囲いは、家の窓枠の外側に設置されている金具や溝に、厚めの木材を一枚ずつはめ込んでいく方式です。正式な呼び方は分かりませんが、近所のお宅でもよく見かける作業なので、昔ながらの一般的なスタイルと言っていいと思います。
最近の新しい住宅では、雪囲いをしなくても耐えられる強度の高い窓や構造が増えてきましたが、古い家ではこの“木材はめ込み式”がまだまだ現役です。
もちろん、雪囲いをするとどうしても室内に入る光が減り、部屋が暗くなってしまうというデメリットはありますが、家を守るためには仕方のないこと。
手間はかかりますが、この作業こそが、何十年もの間、家を雪害から守ってきた“雪国の知恵”そのものなのだと改めて感じます。
💡 豆知識:「雪囲い」と「冬囲い」の違い
ちなみに、雪国では「雪囲い」と似た言葉に「冬囲い」があります。厳密には地域や用途によって定義が異なりますが、主な区別は以下の通りです。
- 雪囲い: 主に家屋(窓や壁)を、雪の重みや圧力から守るための対策。
- 冬囲い: 主に庭木や植え込みを、雪の重みや寒風、凍結から守るための対策(雪吊りなどもこれに含まれます)。
同じ意味で使われることも多いですが、今回は建物を守る作業だったので「雪囲い」と呼んでいます。
⚠️ なぜ今、クマが人里に? 知っておきたい基礎知識

熊の爪痕を目の当たりにして、私たちも作業の前に、今年の異常な出没状況について調べてみました。ここでは、私たちの雪囲い体験に入る前に、知っておきたいクマの基礎知識をまとめておきます。
ツキノワグマの活動と出没のピーク
日本の山に生息するクマは、ツキノワグマとヒグマの2種類。ツキノワグマは本州、ヒグマは北海道のみに生息しています。クマは、秋から冬にかけてのこの時期、最も活発に行動します。
- 活動時期: 暖かくなる春に冬眠から覚め、秋の終わりから初冬にかけて冬眠前のエネルギー補給(採食)のために活動量がピークに達します。
- 活動時間: 一般的に早朝と夕方が最も活発ですが、人里の柿やクリ、生ゴミなどを目当てにする場合は、昼夜問わず出没する危険性があります。
クマの主な好物と人里の魅力
クマは雑食で、季節によって食べ物がガラッと変わります。
- 春:新芽、タケノコ、虫など
- 夏〜秋:木の実、ドングリ、果実、昆虫など
冬眠前の秋後半の時期には高カロリーな食べ物を集中して探します。
- 山での好物: ブナやミズナラの木の実(ドングリ)、クリ、カキなどの果実。
- 人里での好物: 山でエサが不足すると、庭先の柿やクリ、農作物、さらには生ゴミやペットフードが魅力的なエサ源になってしまいます。
今年の異常事態の原因は?
今年、これほどまでに出没が多い最大の原因は、山のエサ不足にあるとされています。
クマの主要な食べ物であるブナやミズナラの木の実が全国的に不作だと報じられています。山で十分なエサを得られないため、危険を冒してでも、エサが豊富な人里(農作物、庭の果実、生ゴミなど)を目指して降りてきているのです。
人里での遭遇を避けるための対策
山間地域の住民にとって、クマとの遭遇は常に身近な問題です。以下は一般的な対策をまとめています。
- 鈴やラジオをつけて、存在を知らせる
- ゴミを屋外に置かない(匂いにつられて来るため)
- 山道では周囲の音に注意し、単独行動を避ける
- 子グマを見ても近づかない(近くに母グマがいる可能性が高い)
特に重要なのは、「クマに人間の存在をいち早く知らせる」こと。クマは本来臆病な生き物なので、不意打ちにならなければ逃げていくケースがほとんどだと言われています。
🚨 熊の爪痕を背に…初めての緊張感あふれる雪囲い

基礎知識を頭に入れつつ、いよいよ作業開始です。今回は、私と妻と母の3人でのチーム作業。通常の雪囲いなら気楽な共同作業ですが、今年は「緊張感」が常に付きまとう異例の冬支度となりました。
短期決戦に向けた作戦会議
作業に取り掛かる前に、簡単な作戦会議を開きました。
- 見張り役: 主に裏山側の警戒をしてもらう母に見張り役をお願い。
- 音出し: クマ鈴がないため、スマホでYouTubeを大音量で再生し、作業中に常に人の気配を発し続けることに。
- 逃げ道: 万が一の事態に備え、家の中への迅速な逃げ道を再確認。
普段なら絶対にしないような入念な準備を経て、作業はわずか30分間の集中戦としてスタートしました。
音を絶やさず、恐る恐るの作業

作業の流れはシンプルです。私と妻でガレージから木材を取り出し、窓枠の溝や汚れをさっと清掃。そして、厚い木材を一枚ずつはめ込んでいくだけ。
しかし、今年は違いました。「ドスン」と木材を置く音や、裏山から聞こえる「ガサガサ」という草木の音に、無意識のうちに体がビクッと反応してしまうのです。妻や母も、いつもより無口になり、いつもより無口になり、チラチラと裏山側の柿の木の方向を気にしているのがわかります。
簡単で短い作業でしたが、神経を研ぎ澄ませて周囲を警戒しながらの30分間は、今まで感じたことのない初めての経験でした。
安堵のコーヒーと、雪国の現実

無事、全ての窓に木材をはめ込み、作業完了。
「ふぅ…今年もなんとか終わったね」
ほっとしたところで、母が淹れてくれた温かいコーヒーを飲み、ようやく一安心です。コーヒーの湯気とともに緊張感が解け、改めて熊の爪痕を見に行くと、その生々しさが今回の体験が夢ではないことを示していました。
毎年恒例の雪囲いは、もはや雪の重みだけでなく、「自然の脅威」というもう一つの重い現実と向き合う作業になったことを痛感したのです。
🌲自然の中に身を置くことの覚悟

今回の雪囲い作業、そして熊の爪痕を目の当たりにした体験を通じて、私たちは読者の皆さまにどうしてもお伝えしたいことがあります。
[読者の皆様へ]脅威と隣り合わせである現実
自然の中で暮らす――それは、美しい景色や澄んだ空気、新鮮な食べ物など、数えきれない恩恵に満ちています。
しかしその裏には、常に 「思いもよらない脅威と隣り合わせである現実」 が潜んでいます。
キャンプや登山が好きな方、雪国への移住を考えている方、自然豊かな地域へ観光に訪れる方へ。
自然は優しい。しかし同時に、厳しく、油断を許しません。
雪囲いのように受け継がれてきた知恵。
そして、熊への対策や気象の変化に備える現代の知識。
この “昔と今の備え” の両方を持つことこそが、自然と共に生きるための 「覚悟」 だと実感しています。
どうかこの冬、皆さんも自然の美しさだけでなく、そこに潜む厳しさにも目を向けてください。
そして、その厳しさを理解し、敬意と警戒心を持って過ごしていただければ幸いです。
🏡故郷に残る母への想い。静かに、穏やかな春を祈る

熊の爪痕を背に、初めて感じる緊張感の中で雪囲いを終えることができました。
物理的な作業が完了し、これで今年もなんとか冬を迎える準備ができたという安堵感はあります。母の家は屋根に融雪設備があるため雪下ろしの心配はなく、今回の雪囲いで窓の防御も完璧。家屋の安全はひとまず確保できたと言えるでしょう。
しかし、私たち家族が離れて暮らしている以上、これから迎える厳しく長い冬を母一人で越さなければならないという現実があります。
融雪設備があっても、家の前の雪かきだけは毎日のように必要になります。若くない母が、クマへの警戒をしつつ、あの重い雪と毎日向き合わなければならない——。
今回の異常な熊の出没は、私たち家族に、雪の重みという「伝統的な脅威」と、人里にまで迫る「自然の脅威」という、雪国が直面する二つの重い現実を突きつけました。
厳しく長い冬を前に、母を残して帰路につく私たちの胸中は、なんとも言葉には表せない複雑な気持ちでいっぱいです。
優しさだけでなく厳しさを持つ自然に感謝しつつ、故郷の風景が静かに、無事に春を迎えることを心から祈るばかりです。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

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